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怪なるブツ



4月19日(土)

 午前中は旦那が病院へ。
その間にたまった家事をこなしていると、
昨夜連絡した義父の姉である伯母から電話。
伯母は80才をとうに越えているのに、
とても若々しくしゃきしゃきして上品なお年寄りだ。
「そばにいると本人が気を使うからこれで帰るけれど
何か手伝えることがあったら言ってね」とのこと。

 午後から子供らも連れて病室へ行くと
義妹も来ていた。義妹がみているあいだ、
旦那は外で食事してこれたという。

一目見て昨日よりだいぶ悪くなってるのがわかる。
片側だけだった肺炎が両肺とも真っ白になっていて
担当医によると、今日、明日の命であると。

 その後旦那は病院の近くの介護付き老人施設へ。
そこで暮らしている義母を車で迎えに行ったのだ。
義父が肺炎で入院してることは知ってるが、
危篤状態であることはまだ話してなかった。
車椅子でかけつけた義母は、ベット上でかすかに
反応する義父を見て涙するばかり。しかし義母も
余り体調が思わしくなく、長居することなく
15分ほどいて施設に帰っていった。
これが今生の別れとなった。

 義母を送るついでに旦那と子供らが帰宅したあと
しばらくして、義母の妹である叔母が、ハードな
スケジュールを縫ってお見舞いにきてくれた。
義父の傍らでなんだか色々なことを、久しぶりに会った
叔母と話し込んだ。

 正常なら100近くな酸素飽和度が、50台まで
下がり、呼吸がつらそう。
時々大きな声でうめく。
気道を広げる点滴をしてもらったところ、ようやく
90台まで数値が上がってひと安心。
しかしながら目つきがトロンとして
呼吸もはぁはぁしている。

 夕方6時頃、たまたま窓の外に目をむけたら
曇り空にうっすらと短い虹がかかっていた。
「お義父さん、虹が出てます」
と言うそばからみるみる薄れていき、
1分ほどして溶けるように消えてしまった。
お義父さんからの反応はなかった。

 その後も片時も目が離せない様子だったので、
今夜は私がこのまま病院に泊まることにする。
食欲が無かったので、コンビニのサンドイッチ1つと
毛布を持ってきてくれるよう旦那に頼む。

 面会時間を1時間ほど過ぎた夜に、思いがけず
義父の弟が遠方からお見舞いにきてくれた。
丁度痰をつらそうに取ってる時だったので
慌しい間だったが、そのときは義父もしっかりと
叔父の声かけに応え、叔父が帰ったあとも、
今来たねぇと言っていた。
# by qubok | 2008-05-07 13:17 | 葬(おく)る

4月18日(金)

終末期相談支援から話を戻しまして...

6人部屋から個室へ移動させられた。
心電図や酸素濃度が常時表示される、
生体情報モニターが設置されてる。

個室なので周囲に気遣うことなく
決められた面会時間以外にも付き添えるのが
嬉しい。ただ、付き添うといっても、文字通り
そばにいるだけで、してあげれることはほとんどない。
というのも2年前から胃に直接栄養剤を流し込む、
胃ろう生活のため、口から何かを飲んだり
食べたりできないから。誤嚥性肺炎にさせない為の
非情な処置だ。

 きょうも酸素マスク越しに色々しゃべるお義父さん。
呼吸が苦しそうなので余りしゃべってほしくないのだけど。
入院前から夢と現実がごっちゃになることが時々あり、
どう考えてもおかしいと本人もわかってはいるのだが、
どうしてもそれを夢だと思えず、お金が無くなったといっては
大騒ぎしたり、仕事関係でトラブルがあったから
会社の○○さんになんとしても連絡とらないと...
とあせったりしていた。その会社関係のトラブルへの
妄想がきょうも襲ってきたらしく、しきりに
その心配を口にする。肺炎が治ったら連絡しに
行きましょうねとなだめ続ける。

明日、床ずれ防止用のエアマットを申し込むように
言われる。
乾燥肌のせいか全身の痒みを訴える。
これは入院前からの悩みで、掻き毟ってしまうのか
皮膚が酷い状態になっている。
点滴の中に痒み止めをいれてもらう。

拘束に関する同意書、というのにサインさせられた。
点滴の針を抜いてしまうので、軽く足元と片手を
縛るとのこと。

 状態が安定しているように見えたので
今夜は帰ることにする。
「お義父さん、明日また来ます。きょうは
これで帰るね」というと
「気をつけて」
と言われてしまった。
そんななんでもない一言に涙が出る。

 夜帰宅してから、親しい親戚に容態を
連絡する。明日は旦那と義妹と私の三人体制で
付き添うつもり。
しばらくはまともなご飯を子供らに作れそうにないので
夜中カレーを作り貯めておく。
# by qubok | 2008-05-06 12:26 | 葬(おく)る

後期高齢者終末期相談支援料とは (その2)

正直に言えば、この制度のおかげで、義父が
植物人間にならなくてほっとしています。

こういう話題のとき、真っ先に思い出す有名人は、
脳出血で倒れてからもう6年間も、入院を続ける
漫画家の赤塚不二夫氏。2年前に、献身的に
看病してきた奥さんが、クモ膜下出血のため
56歳で急逝したことも知らないまま、今も意識不明。
年間の治療費は3千万円だそう。

国の予算80兆円のうち、老人医療費が10兆円
という数字を聞くと、これからの超高齢化時代
確かになんとかする必要性を感じます。
けれどだからといって、このうすら寒いシステムには
違和感をおぼえる。
昔の映画「ソイレントグリーン」のように、老人を
廃棄物としてみなすかのような。
65歳以上の障がい者と75歳以上の老人は
さっさと死になさいと迫るこの国家的システム。

T4計画の恐ろしさは、善良な市民が率先して
受容していったことです。
市場原理に振り回されて、いつしか狂気の領域に
踏み込んでいることに誰も気づかないとしたら。。。
一元的な価値観だけで論じるべきことでない。
慎重な議論が必要だと思う。
# by qubok | 2008-05-05 21:33 | 葬(おく)る

後期高齢者終末期相談支援料とは (その1)

2008年の4月1日より実施された「後期高齢者医療制度」の中で
新たに設定された診療報酬。
後期高齢者とは、65歳以上の障がい者と75歳以上の老人のこと。
彼らが危篤になったとき、延命処置をするかしないかの
本人の意志確認の記録をとっておけば、200点(2千円)の
診療報酬を与えるというもの。

 この決定に対して全国保険医団体連合会というところは
先月20日づけで撤廃要求の声明を出しています。
「終末期をどこで迎え、そこでどのような医療行為を望むかは
本人と家族の意思によって決められるべきものであり、政府が
意思表示を求める仕組みを作り、それを診療報酬で評価す
る性格の問題ではない。まさに、医療費抑制のためには
手段を選ばない、人間の尊厳を踏みにじる点数設定である。」

赤旗では、高額な医療費を使ってもどうせ死ぬ年寄りへの、
無駄金を抑制する仕組み、とズバリ書いてます。

現場の医師もバカにするなと怒り、ナチスドイツの
優生学を基盤にしたT4計画(障がい者を「安楽死」の
名のもとに20万人以上抹殺した)を引き合いに出して
その危険性を警鐘してます。
コチラ

 この反対論の多いできたてほやほやの制度への、
まさにまっただなかの当事者に知らないうちに
なっていた私たち。
長くなるので(その2に)続きます。
# by qubok | 2008-05-05 16:02 | 葬(おく)る

4月17日(木)

病院から、
話があるので御主人同伴で説明聞きに来て下さい
と連絡がくる。帰宅時刻が9時か10時になると伝えると
それならば仕方ありません、お一人で来てください
と言われ、ただならぬ気配にびびりながら担当医の話を
夕方聞きにいく。

ナースステーションの片隅で、レントゲン写真を見せられながら
義父の病状説明を受ける。
診断は重度の肺炎。ここ二、三日が山場と言われる。

山場って......?
あんなに普通に意識があって、
多少ぐったりしてるとはいえ普通に話してる人が?
信じられない。。。

最後に一枚の紙を渡される。
「緊急時治療に関する同意書」とかなんとか
そんな風なタイトル。4つほどの設問と
それぞれに対する 「はい いいえ」欄があって
どちらかに丸をつけろというもの。

人工呼吸器をつけるか?   はい  いいえ
昇圧剤を点滴するか?    はい  いいえ
心臓マッサージをするか?  はい  いいえ

その際、この高齢で人工呼吸器をつけた場合、
その後一生外せなくなること、
実際この病院にも呼吸器をつけ植物状態で
数年入院したままの患者が三人いること、
心臓マッサージについても、容態が急変して
すぐ駆けつけてくるならまだしも、家族到着までの
30分以上ずっとマッサージしていたら
胸部骨折してしまう等々
「いいえ」に○しやすい雰囲気の話をされる。

家族でよく話し合って、けれども万一に備えて
早急に記入して提出してほしいと言われ、
旦那に即刻帰宅するようメールし、
事の重大さにとり乱しつつ、義妹にもその場で
電話した。

夜の8時頃帰宅した旦那に状況を説明し
昇圧剤以外は「いいえ」に○をした紙を持って
時間外の病院へ提出しに行く。
様子を見に二人で病室へ行くと、相変わらずの
酸素マスク付きながら、普通に会話できるお義父さん。
看護婦さんも、きのうより熱が下がって今は7度少し
と、安心情報を与えてくれる。
あの担当医は少々大げさなんじゃないかとすら思いつつ
その日はそのまま帰宅。

このとき提出した紙は、そのときはわからなかったけれど
今なら、何かと問題視されてる
「後期高齢者終末期相談支援」だったんだなと
思い当たる。
# by qubok | 2008-05-05 01:15 | 葬(おく)る


怪しいモノども

by qubok
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